1999年5月、ひろゆきさんは日本最大級の匿名掲示板「2ちゃんねる」をリリースした。
仲間と交流していた「あめぞう掲示板」がひどいあらしを受けたことから、ひげおやじさんをはじめとした友だちたちとの交流のために「遊び場をつくる」という思いで開発をしたのだ。
2ちゃんねるは、順調に成長をし、やがて多くの社会現象を巻き起こすこととなる。
しかし、2009年、ひろゆきさんは2ちゃんねるの所有権をシンガポールにあるパケットモンスター社に譲渡する。
譲渡する理由は1つではないとしたうえで、ひろゆきさんは大きな理由を以下のように語っている。
「なかでももっとも大きな理由というのが、ちょっと前から2ちゃんねるの運営に関して僕のやることがほとんどなかった、ということです。」
(【僕が2ちゃんねるを捨てた理由】P11より)
サイトの運営自体は仕組み化されていて、ボランティアによって運営がされる。ひろゆきさんが大きく関与せずともサービス運営が継続されていたという。
また、2007年に出版された「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」にはこのようにも書いてある。
「僕が逮捕されて、2ちゃんねるが運営できなくなってしまったとき、ジムは、僕のドメインの管理者でもあるので、「じゃあ俺やるわ」と、僕に代わって運営を始めるのではないかと思っています。そして、何もなかったかのように、2ちゃんねるの日常は続いていく……。」
(【2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?】P16より)
ジムはモンスター社というサーバー管理会社を営む人物。2ちゃんねるのドメインを保持していた。
このコメントからは、ひろゆきさんの手元を離れることを望んでいるようにも、執着がないような感情が透ける。
そして2022年10月現在、2ちゃんねるはひろゆきさんの手元を離れたままだ。
「2ch.net」をURLに打ち込むと、出てくるのは5ちゃんねる(5ch.net)。
しかし、このサイトの運営者はひろゆきさんでもなければ、パケットモンスター社でもない。前述の「ジム」の息子であるロナルドが運営しているのだ。
ひろゆきさんは2ちゃんねるが不当に乗っ取られたとして、世界知的所有権機関(WIPO)の調停・仲裁センターにたびたび申してたを行っている。
仲間のために2ちゃんねるをつくり、運営し、度々の訴訟を受け、奪われ、取り返そうとするも失敗に終わってしまったひろゆきさん。ここでは、乗っ取りの経緯と、ひろゆきさんの心境を考察をしていきたいと思う。
2ちゃんねるをつくった経緯
ひろゆきさんが2ちゃんねるをつくったのは、前述のとおり「あめぞう掲示板」がひどい荒らしにあい、運営が困難になったことをきっかけに、仲間内で使える掲示板がほしいという考えからでした。
「そんなとき、「新しい遊び場を作っちゃう?」と、ひろゆきくんがはじめたのが『2ちゃんねる』になります。ですから『あめぞう掲示板』のことを知らない人は、『2ちゃんねる』を想像してもらえたら、わかりやすいと思います。
『あめぞう掲示板』という遊び場が機能しなくなって困っているときに、僕らの遊び場としてひろゆきくんが提供してくれたのが、『2ちゃんねる』なのですから……。」
(【プラマイゼロの生き方】P17より)
ひろゆきさんは開設の際に以下のような投稿をしているらしい。
そんでもって、、 投稿者:ひろゆき 投稿日:99/05/30(Sun)12:42
読者投稿欄に宣伝です。
あめぞう掲示板っぽいものをつくりました。
どうでしょう?
どうかな?
どきどき404 Error - Not Found
「面白そうだから。へっへっ。まあのその、インターネット以外に、多数の人がコミュニケーションをするものがなかったので、これはわりと流行るなと思っていて、僕がわりと入り浸っていたあめぞう掲示板っていうのが、すぐ落ちててログが消えてたんですよね。なんで、落ちないようにしてログが消えないようにしたら、全然便利なんじゃねと思って、プログラムを自分でかいて、ログが消えないっていうのをつくったっていう。なんで、自分が使っているサービスを、こうやったほうがもっと便利じゃんっていうのがあったんで、それを自分でつくったんで(後略)」
2ちゃんねるを運営する
2ちゃんねるはひろゆきさんの目論見どおり、サーバーダウンが続いていたあめぞう掲示板から徐々にユーザーが流れ始める。
そして、リリースから1ヶ月が経ったころ、6月に「東芝クレーマー事件」が起きる。
その事件は、東芝が顧客からの苦情に対して暴言を浴びせるなどの対応を行ったことがメディアで報道されたもの。2ちゃんねるでもこの事件に対して掲示板が立てられたことで、大きくアクセスを伸ばすきっかけになった。
以来、2ちゃんねるでは犯罪予告が発生したり、バスジャックの犯人が2ちゃんねる利用者だったり(この事件が西鉄バスジャック事件。ひろゆきさんがはじめてメディアに露出したきっかけとなる)モナーが誕生したり、電車男が誕生したりといろいろなできことが起こる。
やがて1000万を超えるユーザー数の支持を集めることとなる。
が、しかし、2014年2月19日に突如2ちゃんねるの実質的管理権限がジムに移転する。
こうしてささやかに終わり、時代は変わっていくんですなぁ。
— ひろゆき (@hirox246) February 18, 2014
2ちゃんねるの権利を奪われる
突如ジムにより「十分な収入を獲得」できなかったことにより首を言い渡されたひろゆきさん。
事件から約2ヶ月後の2014年4月1日に以下のような投稿を行っています。
「2ちゃんねるのサーバとドメインは株式会社ゼロのレンタルサーバサービスを借りて運営されてきました。
月額2万ドルという契約で10年以上その関係は続いてきました。
昨年より、株式会社ゼロが提携するNTテクノロジー社の経営が芳しくないということで、契約のサーバ代金に上乗せして多額の送金をしてきました。」「金額にして、52万ドル、日本円にして5000万円以上の送金をしました。
契約上では、1年間に24万ドルの契約ですので、レンタルサーバ代の送金額が不足していたという事実は全くありません。ところが、2014年の2月19日に、レンタルサーバ会社側は、サーバのログインアカウントを変更して、2ちゃんねるの運営スタッフがサーバに入れないようにし、ドメインの登録名義を変更して、2ちゃんねるを乗っ取るという行為に出ました。そして、サーバのレンタル代とは関係なく、5万ドルの送金をするように強要されました。」
(「昨今の2ちゃんねるの現状に関して」より)
ジムの要求に対して、指示通り支払いを行ったひろゆきさんですが、ジムは権利を戻すことなく、2ちゃんねるの権利を持ち続ける。
その後、「2ch」の商標はひろゆきさんが2014年3月に出願、拒絶されたものの不服審判を経て3月23日付けで登録の権利を認められる。
4月11日、ひろゆきさんは2chの内容をコピーする2ch.scを公開。
その後、ひろゆきさんはジムに乗っ取られた2ch.netを取り返すべく調停を行っていく。
「ひろゆき氏が「2ch.net」奪還か 「ドメイン不法占拠」申し立て」(2016年05月26日 11時15分 公開)
「ひろゆき氏、「2ch.net」奪還ならず WIPOが申し立てを棄却」(2016年08月05日 16時45分 公開)
「現「2ch.net」管理者「ひろゆき氏の言動は虚偽」 ひろゆき氏「奪還あきらめていない」」(2016年08月07日 11時55分 公開)
しかし、その後2017年10月1日、2ch.netのトップに、「掲示板の管理運営権を『Racequeen, Inc』から『Loki Technology, Inc』に移転」する旨の投稿がなされる。(『Racequeen, Inc』『Loki Technology, Inc』はともにジムが運営する会社だといわれている)
また、権利の移転にあわせてサイトは2ch(2ちゃんねる)から5ch.net(5ちゃんねる)に変更された。5chの商標は2016年12月にジムの息子であるロナルドが取得。
これは、2chの商標をひろゆきさんが取得したことにより、サイト名称・ドメインを2chのまま維持することに対して違法性を認識したのではないかと言われている。
そして、2018年6月22日、ひろゆきさんはジムが運営する「NTテクノロジー社」を相手取り、日本国内の民事訴訟を行っており、東京地裁判決で勝訴。
2ちゃんねる乗っ取り事件で、東京地裁判決が出まして、全面勝訴でした。
違法行為に携わってる方々や代理店の人もわしわし訴えていきますので、今後ともよろしくお願いします~https://t.co/xqirRmSfBc
— ひろゆき (@hirox246) June 23, 2018
しかし、2019年4月25日、東京高等裁判所でひろゆきさんが代表を務める東京プラス社の請求が棄却される。
本日、東京高等裁判所で西村博之氏が代表取締役を務める東京プラス株式会社から弊社に提起された訴訟について判決がございました。東京高等裁判所が、東京地方裁判所の平成30年6月22日判決を取り消し、東京プラス株式会社の請求を全て棄却しましたことをご報告致します。1/2
— 8chan (8ch.net) (@infinitechan) April 25, 2019
弊社としては不当な裁判により、多大な迷惑を被りましたが、裁判所により、弊社の正当な主張が認められましたことを感謝申し上げます。弊社は、元号が平成から令和に変わりましても、日本の皆様に有意義なサービスをご提供させていただくためにも、不断の努力を続けてまいります。
N.T. Technology 2/2— 8chan (8ch.net) (@infinitechan) April 25, 2019
2019年12月4日にも最高裁判所での上告棄却および不受理が決定された。
「東京プラス株式会社(代表取締役西村博之)が原告として、NTテクノロジー社に対して起こしていた損害賠償請求訴訟について請求を棄却する判決が、最高裁判所の上告棄却及び不受理決定(令和元年11月21日)により確定しましたことをご報告致します。1/2
— 5channel (5ch.net) (@5chan_nel) December 4, 2019
NTテクノロジー社は、日本の裁判所による公正な判決(NTテクノロジー社の勝訴)について歓迎するとともに、今後とも皆様により良いサービスを提供できるよう不断の努力を続けてまいります。」https://t.co/361mWA4kvS 2/2
— 5channel (5ch.net) (@5chan_nel) December 4, 2019
なお、8chもジムが運営する掲示板。息子のロナルドが元管理人。
8chはアメリカでは陰謀論がうずまく掲示板として有名で、殺害予告が原因でサーバー会社からホスティングを停止され、その後8kunとして掲示板を再開している。
そして現在
しかし、ひろゆきさんはYoutubeにて裁判を続けている旨のコメントをしている。
「Q.ひろゆき氏はなぜ2ちゃんを裁判で取り戻そうとしていますか? すでにユーザーは高齢化してWebサイトとしての需要も低いと思います。いらないんじゃないですか? 長期続く裁判を続けてまで2ちゃんを取り戻したい理由を聞きたいです」
「A.まああの裁判始めちゃったんで結果がどうなるのかが知りたいっていう好奇心のほうが多かったりしますね、はい。」
これは果たして本心なのか、やはり悲しい思いは胸に秘めているのか……。
過去には以下のような記事も出ているが、ドライなひろゆきさんだけにあるいは本当に好奇心だけなのかもしれない。
「ひろゆき氏は2ch.netについて「現在の管理者は違法に乗っ取っており、自身が正当な権利者だ」との主張を続けており、WIPOの裁定結果を受けた後も、2ch.netの奪還をあきらめていないという。今後どのように奪還を目指すかについては、「先方に対策されると面倒なので、説明するのは難しい」
現在は「ペンギン村」やYoutube切り抜き、自治体へのコンサルなどさまざまな取組を行うひろゆきさん。
自身の原点ともいえる2ちゃんねるを取り戻す日は来るのか。
〆
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